The view from Hua Hin
Tsukumogami/九十九神
九十九神曼荼羅シリーズは、美大の学生さんが、町中で見つけたゴミをクリーチャー化するという仕事をしていて、そのクリーチャーを元に、短編小説化するというもくろみで始まった。スタート時点ではゴミのクリーチャーということで、「ゴミクリ」と呼んでいたのが、今ではその呼称も消えてしまっている。
当初はプラネタリアートで始まり、現在は小学館の夢幻インフィニティシリーズに引き継がれているが、「ゴミクリ」はとっくに底をつき、以来、一切の縛りがなくなっている。
僕が、このシリーズで書いたのは7作で、そのうちの6作が、シリーズ内シリーズの「こちら公園管理係」だ。
最初の一作である「ヒア・アイ・アム」は、まさにクリーチャーによって生まれたストーリー。クリーチャーの元になったゴミは自転車の反射板らしきものだし、ボディはカエルっぽい。
以前の家の近所で、わりと高頻度でカエルの交通事故を目撃したので、こんな話になった。中のイラストも小説世界を見事にとらえたすばらしいものだった。
なお、タイトルは、これを書いた頃聞いていた、元ディスティニーチャイルドのケリー=ローランドのアルバムからです。
「砂場の王」に登場するクリーチャーは、カップ酒のアルミキャップをモチーフにしたモノで、これも最初に見たときから気に入っていた。いかにも公園の砂場に隠れて悪さをする感じからストーリーは組み立てられている。この作品で、公園を舞台に何かが起こるというフォーマットを使い、のちのちのシリーズキャラクターであるガンさんも登場した。九十九神企画が立ち上がったときには、作者ごとにシリーズ化するという話はなかったのだが、この作品を書いたことで、僕の作品もシリーズ化へとつなげることができた。
SF的には最終話の「さよならガンさん」と呼応し、全6作で完結するような作りになっている。
このタイトルは「時砂の王」ですね。
「空へ」は、もちろん「テラへ」。この頃はこんな風にタイトルをつけ、密かに遊んでいた。クリーチャーが風船と、その風船の持ち手で、踊っているようにも見えたため、踊りながら空に向かっていくというイメージから小説は始まっている。
もっとも、「砂場の王」とは違い、クリーチャーは悪さをしない。だから、小説の組み立てとしては全くの独立作でもよかったのだが、主人公の「僕」を「砂場の王」から引っ張ったし、その「僕」が奇妙な世界へと入り込むきっかけとしてガンさんも登場する。そう言ったわけで、この作品は幻想的なイメージを扱った作品になっており、「こちら公園管理係」の中ではかなり異色の作品となっています。
最初の三作から、若干の時間を空けて、この「フェンスの向こう」という作品を書いた。これまでの三作では、クリーチャーの元になったゴミが何かはっきりしており、その何かからストーリーを膨らませるというアプローチだったのだが、これはモノが何か今ひとつわからない。見た目が何となくかっこいいから選んでしまったものの、料理をするにも手がかりがない感じだった。
で、結局、これは、金属のメッシュでできたフェンスの切れっ端に違いない、ということで書いてはみたものの、本当のところはわからないまま。
フェンスがちぎれると言うことは、何かがフェンスをちぎって脱走する必要があったと言うことだろう、ということでできた話です。
この作品を書く段階で、公園の横が河原になっているという設定が追加され、その設定が後の「炎の記憶」で使われている。
「海から来た怪獣(モノ)」のクリーチャーは、発泡スチロールのかけらで、いかにも海岸に打ち上げられていそうなものだった。形も、見るからに四つ足の怪獣(たとえば、ネロンガとかね)のような形だったので、怪獣モノにしようかと。
この作品では、主人公である「僕」はお休みで、ガンさんに誘われて海に出かけることになる。
怪獣モノの常なので、事件としては、それなりに大がかりな事件を起こしているのだが、その事件が後を引かないように収束させた。ある程度の数を書いて、うまくすれば紙の書籍にできないか、という話が出てきていたからである。
そんな流れにうまく乗っていったのが平谷美樹さんのシリーズで、当方は、残念ながら。。。。
この作品を書いた時点で、「ゴミクリ」は底をつき、あとは各自で考えて・・・な展開になる。
そんなことで、若干、時間が空いて書いたのが、この作品「炎の記憶」だった。ブログにも書いたとおり、この時点で「九十九神曼荼羅」が「夢幻インフィニティ」に衣替えをしたのだが、まずはガンさんのシリーズを完結させようと言うことで、この作品と、次の「さよならガンさん」をまとめて書いたような次第である。
このときになって初めて「こちら公園管理係」というシリーズタイトルがついた。
内容は、というと、、、まあ、僕のような年代で、しかもSFが好きとなると、幼少期はウルトラマンシリーズであったり、仮面ライダーであったりするのが当然なのだが、この作品はウルトラセブンなのである。どこがウルトラセブンなのかは読んでいただくのが一番いいのだが、炎の色は夕日の色だったりするわけで。
狭いアパートで、ちゃぶ台をはさんでセブンと向き合う姿が、何ともシュールで記憶に残ったのでした。
このときのゴミクリは古い七輪で、七輪ってどんな形だったっけ、と思って調べたところ、意外といろいろな形があって驚いた。
「こちら公園管理係」の最終話となった「さよならガンさん」は、僕の中では、ガチSFなのである。ただ、扱っているのが人間原理なので、ある意味何でもありなのだが。
この最終話では、ついに話の鍵となるような形でのゴミクリは登場しない。ガンさんはどういう人だったのが、なぜ、ホームレスなのか、元々何も考えずに始めた割には、無事着地姿勢も決めており、我ながら立派なモノだと思っている。
「こちら公園管理係」の6作が(あるいは「ヒア・アイ・アム」を含めて7作が)一冊の本になればよかったのだが、状況はなかなか厳しい。何か別の作品でブレークして、過去の作品にも日が当たるようにならないと。。。。